さまよえる仔羊

優柔不断全開、人生の迷子であるひつじ™のアレコレ。

Book: 「肩ごしの恋人」 唯川恵

直木賞受賞作品をとにかく読み漁ってみようと思い立ち、最初に手にしたのがこの本だ。
唯川恵の作品はこれまでにもいくつか読んでいるが、毎回、ふーんという感想だった。
正直に言うと、あまり男女の恋愛をテーマにした作品は好きではない。
描かれる世界が私自身の感覚とずれていることと、たいていの作品に出てくる男も女も好きになれないからだ。

今回は勝手が違った。
主人公(女)とその幼なじみの女性が、魅力的だった。
特に幼なじみのるり子。
とにかく男にだらしなく、次々と良さそうな男をたらし込んで、最後には主人公の元恋人を夫にしてしまう。
女としてある程度生きてきて、ようやく彼らのような生き方も想像でき、受け入れられるようになったのかもしれない。
最近、私はこういう突き抜けた女性に弱い。
何が悪いのよとふんぞり返り迷いがない。
うらやましい生き方だと思う。

ストーリーもなかなかおもしろい。
昨今は他人と大きな家に住むことが流行になりつつあるが、主人公と幼なじみ、高校生の男子三人での不自然な同居生活が始まり、それぞれの愛に目覚めていくというものだが、そのプロセスは軽快で楽しく、心にそっと灯がともるような温かい話だ。
私の駄文では実に陳腐な話になってしまうが。

中学生の頃、幼なじみと毎朝学校に行くときに、大人になったら東京に出て一緒に住もうと夢のような話をした。
お互いが通うことになった大学が離れた場所だったため、今ではその友人とも数年に一度会うかどうかというつきあいになってしまった。
私と彼女が、いま仮に同居することになったとしたら、どんな生活になるのだろう?
この主人公のように押し掛けてきた友人をそのまま受け入れることができるだろうか?
そんなことを考えながら、自分からはなかなか助けてと言えないけれど、友人がいつでも助けてと言ってくれるような人間でありたいと思った。

※ 2001年下半期 第126回 直木賞受賞作