さまよえる仔羊

優柔不断全開、人生の迷子であるひつじ™のアレコレ。

Book: 「ターン」 北村薫

北村薫の時と人三部作の二作目。
ここに来て、気分は尾道三部作になりつつある。

今回の主人公は、29歳の版画家。
もちろん女性。
ある日、自動車事故に遭ったはずが、目を開くと実家の居間に。
夢かと思ったが、彼女は前日の15時に引き戻され、同じ一日を永遠に繰り返すという時間の囚われ人となる。

冒頭から、天の声が主人公を「君」と呼んでいる。
これは何かあると思っていた。
北村作品はすべての言葉に理由があり、ささいなエピソードはすべて伏線になっている。
その理由の一つは、主人公の癖のようなものだという説明でなるほどと納得する。
ある程度、予感したとおりだ。

しかし、一度なるほどと思った気持ちは、また裏切られる。
天の声の主がある時からするりと変わるのだ。
それは、子供が自我に目覚めるかのように曖昧としてぼんやりとして自然だ。
初めは気づかない。
が、後で気づくことになる。
どこで変わったのかと振り返る。
そして、また納得させられる。

ストーリー全体は使い古されたようなところはあるが、既に「鷺と雪」の片鱗が見られる。
二作の共通点を見出し、自分もほんの少し北村マニアに近づけたのではないかと嬉しくなった。